花粉症
花粉症とは
花粉症とは、スギやヒノキなどの植物の花粉が原因となって、鼻の粘膜や目の結膜にアレルギー性の炎症を引き起こす疾患です。医学的には「季節性アレルギー性鼻炎」および「季節性アレルギー性結膜炎」と呼ばれます。特定の季節にのみ症状が現れるのが特徴ですが、原因となる花粉の種類によっては、長期間にわたり症状が続く場合もあります。
原因
花粉症は、体内に侵入した花粉を排除しようとする「免疫機能の過剰反応」によって引き起こされます。
鼻や目から花粉が侵入すると、体はそれを異物とみなし、対抗するための「IgE抗体」を作り出します。
再び花粉が侵入して抗体と結合すると、細胞からヒスタミンやロイコトリエンなどの化学物質が放出されます。
これらの物質が神経を刺激して「くしゃみ」を、血管を刺激して「鼻水・鼻づまり・充血」を引き起こします。
💡 なぜ個人差があるの?
IgE抗体が作られる量や、化学物質への反応の強さは遺伝や環境によって異なります。
ある日突然発症するのは、体内の「許容量」を超えて抗体が作られるようになるためです。
症状
花粉症の症状は、くしゃみ・鼻水・鼻づまりの「鼻の3大症状」に加え、目のかゆみなど多岐にわたります。風邪との見分けがつきにくいことも特徴です。
- 立て続けに出るくしゃみ
- 透明で水のような鼻水(さらさらしている)
- 鼻づまり(鼻粘膜のはれによる)
- 強い目のかゆみ
- 目の充血
- 涙が止まらない
のどのかゆみやイガイガ感、皮膚の肌荒れ(花粉皮膚炎)、頭が重い感じ(頭重感)などが現れることもあります。
💡 症状が本格化する前(飛散直前〜直後)から治療を始める「初期療法」が効果的です。
花粉症の時期
花粉症は春だけでなく、季節を問わず様々な花粉が飛散しています。症状を軽くするためには、ご自身のアレルゲンとなる花粉の時期を知り、早めに対策を始めることが大切です。
日本人の花粉症の原因として最も多いタイプです。飛散量が多く、広範囲に影響が及びます。
主に「イネ科」の花粉です。河川敷や公園などの身近な草むらに生息しているのが特徴です。
キク科などが中心です。背丈が低いため、近づかなければある程度防ぐことが可能です。
検査
多くの場合、詳細な問診によって診断が可能です。いつ頃から症状が出始めたか、どのような環境で悪化するかなどを確認し、総合的に判断します。
花粉症の治療(お薬の種類と特徴)
花粉症の治療には、症状(鼻水、鼻づまり、目のかゆみ等)やライフスタイル(車の運転の有無など)に合わせて、内服薬、点鼻薬、点眼薬などが用いられます。
治療の種類 | 薬の分類・代表薬 | 特徴・効果 | 注意点・備考 |
|---|---|---|---|
内服薬 (飲み薬) | 抗ヒスタミン薬(ビラノア、アレグラ、デザレックス等) | くしゃみ・鼻水に有効。運転制限のない、眠気が出にくいタイプもある。 | ビラノアは空腹時に服用。自覚なく集中力が落ちる「インペアード・パフォーマンス」に注意が必要。 |
ロイコトリエン受容体拮抗薬(オノン、キプレス等) | 鼻づまりの改善に効果的。 | ||
受容体拮抗薬 | 鼻づまりの改善に効果的。 | 効果発現に1〜2週間かかる。一部の薬との飲み合わせに注意。 | |
点鼻薬 (鼻スプレー) | 点鼻ステロイド薬:液体(ナゾネックス、アラミスト) | 鼻や目の症状に有効。1日1回タイプ。局所作用のため安全性が高い。 | 噴霧時に液だれや刺激を感じる場合がある。 |
点鼻ステロイド薬:粉末(エリザス) | 鼻や目の症状に有効。1日1回タイプ。局所作用のため安全性が高い。 | 液だれや刺激が少ない。現時点でジェネリック品はない。 | |
点鼻用血管収縮薬 | 鼻づまりに対し即効性がある(市販薬に多いタイプ)。 | 連続使用は10日程度まで(長期間使い続けると逆に粘膜が腫れて悪化する恐れあり)。 | |
点眼薬 (目薬) | アレルギー用点眼薬 | 目のかゆみや充血を抑える。 | コンタクトレンズ装着時にも使えるものや、1日の使用回数(2回〜4回)に違いがある。 |
漢方薬 | 小青竜湯、辛夷清肺湯 など | 症状に合わせて単独、または抗ヒスタミン薬などと併用して用いる。 | |
その他 | 舌下免疫療法 | スギ花粉・ダニに対する根本治療。原因物質に体を少しずつ慣れさせる。 | 保険適用。 |
全身ステロイド薬 | – | 【原則非推奨】 重篤な副作用のリスクがあるため、推奨されない。安全な局所治療(点鼻薬など)が基本。 |
※ インペアード・パフォーマンス(無自覚な集中力低下)とは
抗ヒスタミン薬(アレルギーの飲み薬)の副作用により、本人がはっきりとした「眠気」を自覚していなくても、知らず知らずのうちに脳の働きが鈍り、集中力、判断力、作業能率が低下してしまう状態のことです。
仕事や勉強のパフォーマンスが落ちるだけでなく、自動車の運転や危険を伴う作業において重大な事故を引き起こす要因となります。そのため、漫然と薬を使い続けることは避け、ライフスタイルに合わせて「インペアード・パフォーマンスを起こしにくいお薬(眠気が出にくいタイプ)」や、全身への副作用がない「点鼻薬」を適切に選択することが重要とされています。
注意点
毎年飲んでいる薬がほしいという方は、今まで飲まれていた薬が分かるように「お薬手帳」やメモをお持ちいただきご来院いただけますと助かります。
また、これまで使った薬では満足な効果が得られなかったというお話や、薬を飲んで眠気が強かったというお話も診療には貴重な情報ですので、ぜひ診察時におっしゃってください。処方薬を選択する際の参考とさせていただきます。
予防
お薬による治療と並行して、原因となる花粉をできるだけ遠ざける行動が重要です。日々のちょっとした工夫で、症状の重さを大幅に変えることができます。
- マスクや花粉防御用メガネで粘膜を守る。
- ウールなどの毛羽立った素材を避け、ツルツルした素材(ポリエステル等)の衣服を選ぶ。
- 帽子をかぶり、髪への付着も防ぐ。
- 玄関に入る前に、衣服の花粉をしっかり払い落とす。
- 帰宅後すぐに手洗い・うがい・洗顔を行い、顔に付いた花粉を落とす。
- 可能であれば早めに入浴・洗髪をする。
飛散量が多い日は窓の開閉を最小限にします。室内のこまめな清掃に加え、空気清浄機を有効に活用しましょう。
✨ 洗濯物の外干しを控える、布団を叩かない等の工夫も効果的です。
