不眠症(睡眠障害)

「不眠症」の診断、および睡眠習慣の改善指導や薬物療法(睡眠導入剤など)を行っております。不眠症は、単に睡眠時間が短いことではなく、「眠れないことによって日中の生活に支障が出ている状態」を指し、放置するとうつ病などの精神疾患や生活習慣病のリスクを高めるため、適切な治療が必要です。

不眠症とは

不眠症とは、寝つきが悪い、途中で目が覚めるなどの睡眠トラブルが長期間(目安として1ヶ月以上)にわたって続き、日中の強い眠気や倦怠感、集中力の低下など、心身に不調をきたす疾患です。
「8時間寝なければならない」といった医学的な基準はなく、睡眠時間が短くても日中の生活に支障がなければ不眠症とは診断されません。

原因

不眠を引き起こす原因は、主に以下の5つに分類されます。ご自身に当てはまるものがないか、チェックしてみてください。

🧠 心理的要因(ストレスなど)

仕事や家庭のストレス、対人関係の悩み、大切な人との別れ、極度の緊張などが背景にあるものです。

💪 身体的要因(体の不調)

痛み、かゆみ、頻尿、息苦しさ(睡眠時無呼吸症候群など)、むずむず脚症候群といった身体的な病気や症状が眠りを妨げます。

🩺 精神医学的要因(心の病気)

うつ病や不安障害などの精神疾患に伴う不眠です。特に「早く目が覚めてしまう」「何度も起きる」といった不眠は、うつ病の初期症状として現れることが多くあります。

☕ 薬理学的要因(嗜好品・薬)

カフェイン、アルコール、ニコチンの摂取のほか、ステロイド薬や降圧薬などの服用しているお薬の副作用が影響しているケースです。

🏠 生理学的要因(環境・リズム)

交代制勤務(夜勤)や時差ボケによる生活リズムの乱れ、寝室の温度・騒音・光といった住環境の影響などが挙げられます。

発症

多くの場合、強いストレスや環境の変化、身体の病気などをきっかけとして発症します。
きっかけとなった原因が解消された後も、「また今日も眠れないのではないか」という強い不安や恐怖心(予期不安)がプレッシャーとなり、脳が覚醒してさらに眠れなくなるという悪循環に陥ることで、慢性的な不眠症へと移行するケースが頻繁に見られます。

症状

不眠症の症状は、夜間の眠り方によって大きく4つのタイプに分けられます。複数のタイプが同時に現れることも少なくありません。

🌙 入眠障害(なかなか寝付けない)

布団に入ってもなかなか寝付けず、眠りに入るまでに30分〜1時間以上かかる状態です。不安や緊張が強い時に多く見られます。

👁 中途覚醒(途中で目が覚める)

夜中に何度も目が覚めてしまい、その後なかなか寝付けない状態です。中高年の方や、飲酒・身体的要因がある場合によく見られます。

☀️ 早朝覚醒(早く目が覚めてしまう)

予定している起床時間よりも2時間以上早く目が覚めてしまい、そのまま眠れなくなる状態です。うつ病の兆候や、高齢の方に多く見られます。

💤 熟眠障害(ぐっすり感がない)

睡眠時間は確保できているはずなのに、朝起きた時に「ぐっすり眠った」という満足感が得られない状態です。睡眠時無呼吸症候群などが隠れている場合もあります。

⚠️ 日中に現れる症状

夜間の眠りの質が低下することで、日中に強い倦怠感(だるさ)、集中力・記憶力の低下、めまい、食欲不振、気分の落ち込みなどが現れます。これらの日中のつらさが、不眠症の治療を検討する大きな目安となります。

不眠症の加齢による変化

季節的な変動に加えて、加齢に伴う生理的な変化が不眠の症状に大きく影響します。
年齢を重ねると、体内時計の変化や睡眠を促すホルモン(メラトニン)の分泌量の減少により、睡眠が浅くなります。そのため、高齢者では「中途覚醒」や「早朝覚醒」の症状が現れやすくなるという特徴があります。

検査

問診にて、就寝・起床時間、日中の活動状況、ストレスの有無、服用中の薬やアルコールの摂取量などを詳細に確認します(正確な把握のため、睡眠日誌の記録をお願いすることがあります)。
また、不眠の原因が「甲状腺機能亢進症」などの身体的疾患でないかを確認するための血液検査や、「睡眠時無呼吸症候群」などの別の睡眠障害が隠れていないかを鑑別するための検査を必要に応じて実施します。

治療

睡眠環境や生活リズムを整える「非薬物療法(睡眠衛生指導)」と、睡眠薬を用いる「薬物療法」を組み合わせて行います。

お薬のタイプ代表的な種類特徴・安全性
新しいタイプの睡眠薬
(自然な眠気を促す)
・オレキシン受容体拮抗薬
・メラトニン受容体作動薬
脳の覚醒状態を抑えたり、体内時計を整えたりすることで自然な眠りを導きます。従来の薬に比べ、依存性やふらつき、持ち越し効果(翌朝の眠気)のリスクが極めて低いのが特徴です。
従来の睡眠薬
(脳の機能を抑制する)
・ベンゾジアゼピン系
・非ベンゾジアゼピン系
即効性があり、寝つきを良くする効果が強いお薬です。ただし、長期間の使用による依存性や、ふらつき、物忘れなどの副作用に注意が必要なため、現在は「新しいタイプ」への切り替えや、短期間の使用が推奨されています。

注意点

不眠症の治療において最も注意すべき点は、以下の2点です。

🚫 アルコール(寝酒)に頼らない

アルコールは一時的に寝つきを良くしますが、睡眠を浅くするため、中途覚醒や早朝覚醒の原因となります。また、耐性がつきやすく飲酒量がエスカレートし、依存症や臓器障害を招く危険もあります。 ※睡眠薬とアルコールの併用は、呼吸抑制などのリスクがあり極めて危険です。

⚠️ 自己判断で睡眠薬をやめない

薬で眠れるようになったからといって急に服用を中止すると、以前よりも強い不眠が現れる「反跳性不眠(はんちょうせいふみん)」が起こることがあります。 お薬を減らしたり、卒業したりする際は、医師の指示に従って数週間〜数ヶ月かけて段階的に調整していくことが、リバウンドを防ぐ近道です。

予防

不眠の改善には、1日の生活リズムを整えることが近道です。時系列に沿った4つのポイントを確認しましょう。

1
朝:太陽の光でリセット

毎日同じ時間に起床し、まずは日光を浴びましょう。これが夜の自然な眠りへのスタートスイッチになります。

2
日中:適度な運動を

ウォーキングなどの軽い運動で「心地よい肉体的疲労」を作ると、深い眠り(熟眠感)を得やすくなります。

3
夜:ぬるめの入浴でリラックス

就寝1〜2時間前に38〜40℃のお湯に浸かりましょう。お風呂上がりに体温が下がっていく過程で眠気が訪れます。

4
布団の中:眠れない時は一度出る

眠くなってから布団に入り、眠れなければ一度出ること。「布団=眠れない場所」という脳の誤学習を防ぎます。

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